症状一覧
適応障害
- 心療内科・精神科
適応障害とは
適応障害は、特定のストレス要因に対して過剰な反応が現れ、生活に支障が生じた状態です。通常、人生の大きな変化やストレスフルな状況(例えば、離婚、転職、経済的問題、親しい人の死など)が引き金となります。DSM-5では適応障害は、「ストレス因子にさらされて3か月以内に生ずる」「うつ病などの精神障害の診断を満たさないもの」とされています。また、ICD-11では、「ストレス因子への囚われ」と「ストレスコーピングの失敗」の要素が必要とされています。そのため、適応障害ではストレスの要因の同定と除去が重要で、問題が解消されると通常6カ月以内に症状は改善するとされています。
有病率
世界保健機関(WHO)によると、適応障害は精神疾患全体の中で最も一般的な障害の一つで、特にストレスの多い状況にある人々に多くみられます。
日本人の有病率に関しての研究はありませんが、米国の研究によると、成人の約2-8%が適応障害を経験する可能性があります。
症状
適応障害の症状は、多様で個人差がありますが、一般的には以下のようなものがあります。
- 感情的症状:不安、抑うつ、イライラ、絶望感など
- 行動的症状:ひきこもり、仕事や学業への関心の喪失、衝動的な行動
- 身体的症状:疲労感、頭痛、食欲不振など
- 認知的症状:集中力の低下、決定力の欠如、思考の鈍化
治療
適応障害の治療は、症状の軽減とストレス要因への対処を目的とし、個々の状況に応じたアプローチが重要です。症状が持続する場合や生活に支障をきたす場合は、専門的な治療が必要となります。
主な治療法には以下のものがあります。
- 環境調整:適応障害は、環境のストレスに対処できないことから発症します。そのため、安心できる環境に一時避難が有効です。
- 心理療法: 認知行動療法(CBT)、問題解決技法が効果的とされています。ストレス管理のスキルを学び、思考や行動パターンを改善することが目標です。
- 薬物療法: 重度の症状や他の治療法が効果的でない場合、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることがありますが、あくまで補助的な役割です。
- ライフスタイルの改善:ストレスを軽減するための生活習慣の改善(運動、健康的な食事、十分な睡眠)も重要です。
- その他の療法:同じような経験を持つ人々との交流やカウンセリングを受けることで、感情的な支えを得ることができます。症状が改善したものの、復職が困難な場合には、リワーク、就労移行等などに通所し復職・再就職を目指すこともあります。
<うつ病と適応障害の比較> | ||
---|---|---|
うつ病 | 適応障害 | |
誘因 | 発症の引き金になることはあるものの、明確な誘因がなくても発症する | はっきりと確認できるストレス因子が存在する |
期間 | 2週間以上症状が続く | ストレス因子への暴露から3か月以内に発症する。ストレス因子が取り除かれれば6カ月以内に症状が改善する |
病前性格 | メランコリー親和型や回避性パーソナリティなど | 明確なものはない |
抑うつ気分 | 了解不能な気分の落ち込み | 了解可能な気分の落ち込み |
状況による変動 | ほとんどみられない | ストレス因から離れると抑うつ気分が改善し、楽しみを感じることができる |
症状の変動 | ストレス因子の存在に関係なく、症状は一定 | ストレス因子の有無により変動 |
食欲低下・睡眠障害 | 必発 | みられることが多いが、ないことも少なくない |
予後
適応障害の予後は一般的に良好であり、適切な治療とストレス管理によって多くの人が回復します。ただし、ストレス要因や個人の状況に応じて、回復の速度や再発のリスクが変わるため、早期の対応と継続的なサポートが重要です。
最後に
適応障害の方は増加しています。仕事や学校、人間関係、現在ではSNSからのストレスなど、ますます休まる時間が減ってきている印象があります。他者にとって大丈夫なストレスもある人には多大な影響があることも少なくありません。少し休めば回復する場合には、いわゆる疲れですませても問題ありませんが、休んでも良くならない場合や精神や身体に何らかの症状がみられる場合には注意が必要です。適応障害は休息をとれば必ず良くなる症状です。まずは、受診に迷っている方もおられると思いますが、専門機関での診断を受けることをご検討ください。